翻訳者の働き方には、大きく下記の2つがあります。
①翻訳会社又は、翻訳専門部署をもつ企業で 正社員として就労する方法
②翻訳会社のエージェントなどにフリーランスとして登録し就労する方法
①と②には、それぞれメリットとデメリットがあるため、それぞれ自分に合った働き方を探ることをオススメします。
産業翻訳(ビジネス全般に関わる文書の翻訳)
例えば、①の場合。産業翻訳(ビジネス全般に関わる文書の翻訳)は、翻訳業界における依頼の大半のシェアを占めており、比較的求人も多くあります。外資系企業、貿易会社、特許関連会社など、幅広いフィールドでの求人があり、確実に高収入を得たいと考える人には適している働き方と言えるでしょう。
しかし、当然企業に属して働く訳ですから、ライフスタイルにはある程度の制約がかかることは事実です。個々の勤務先の雇用条件にもよりますが、フリーランス程のフレキシブルさがないことは言うまでもありません。
②のメリットは、やはり個人の裁量で勤務時間・場所を決められることではないでしょうか。
私自身も、現在2児の子育て真っ最中であるため、ライフワークバランスを重視し、フリーランス契約で働いています。
しかし正直なところ、①とは逆に高収入ではないことはデメリットです。
率直に言うと、フリーランスの翻訳のみで生計を立てるのは非常に難しいです。
しかし実際は、それだけで生計を立てるのは難しい割に、出版翻訳(洋書を日本語に訳す翻訳のこと)の分野においてはフリーランス契約で働く方が一般的です。
なぜ出版翻訳はフリーランスが多いのか。
それは、産業翻訳とは対照的に、出版翻訳はニーズの絶対量が少なく、1つの依頼から次の依頼までの間隔が空いてしまうことがしばしばあります。企業として出版翻訳を請け負うにはニーズが不足しがちで、逆に依頼の多い産業翻訳が企業に集中しやすいのです。
私のように「家事と育児を両立しながら働きたい」、「自分のペースで働きたい」と望む人にとっては、依頼が立て込み過ぎないフリーランスの出版翻訳の仕事は、最適な働き方とも言えるでしょう。
では、実際に報酬はどの程度かといいますと、1ワード=10円程度で換算されることが一般的なようです。もちろん、依頼内容の難易度や条件にもよるため、一概には言いきれません。
1ワード=10円と言うと、一見「おいしい!」
と思えるかもしれませんが、割に合わないと感じる人は多いです。
というのも、翻訳とは、単に「言語から言語への変換作業」ではないからです。
私が 出版翻訳の仕事を始める際の準備
私の場合、依頼を受けるとまず、原文を何度も何度も深く読み込み、作者(筆者)がその作品に込めた想いを探ります。
そして作品が書かれた時代、また作中の時代背景、登場人物の性格(キャラクター)やバックグラウンドなど、あらゆる側面から原文にアプローチしていきます。その作品の世界観を作者の想いそのままに日本語に訳すにはどうすれば良いか、そこから試行錯誤を幾度も重ねていきます。
私が心がけていることは、作品を深く読み解きながらも、作品の世界観に没入し過ぎて、個人的な解釈や想いの足し算や引き算をしてしまうことのないようにすることです。
作品に敬意と愛情を抱きつつも、常に自分の心の状態をニュートラルに保ち、あくまで作者の黒子として、原文のままのニュアンスを表現できるように言葉を選んでいます。
一筋縄では行かないことも多々あり、こうした試行錯誤に費やす時間の方が、実際の翻訳作業に費やす時間よりも長いことも、また事実です。
依頼がコンスタントにある訳では無いので、収入が安定しにくいのが現状ですが、自分のペースで仕事をするなかで、知見を広げ、自己研鑽を積むことができるのもこの仕事の魅力であると私は感じています。